表面利回り7%って、なんか良さそうですよね。年560万円の家賃収入、悪くない気がする。でも実際に返済・管理費・税金を全部引いたら、手元にいくら残るか計算してみたら……正直びっくりしました。
この記事では、8,000万円規模の地方一棟アパートを例に、実際にシミュレーションした数字を全部公開します。読み終わる頃には、次の3つが整理されているはずです。
- 表面利回り7%から何が引かれるか、項目ごとに理解できる
- 実質の年間手残り(キャッシュフロー)の目安がわかる
- 「数字のよさそうな物件」を見抜くための考え方が身につく
不動産投資の検討を始めると、すぐに「利回り〇%」という言葉に出会います。でもその利回り、本当に正しく理解できていますか? まずは基本から整理しましょう。
なお、ワンルームマンション投資の勧誘を検討した経緯については、こちらの記事でも書いています。→ ワンルームマンション投資の勧誘を見送った理由【会社員の実体験】
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そもそも「表面利回り7%」って何の数字か
表面利回りの計算式は、非常にシンプルです。
表面利回り(%)= 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
たとえば8,000万円の物件で年間家賃収入が560万円なら、560万円 ÷ 8,000万円 × 100 = 7.0%。これが「表面利回り7%」の意味です。月換算で言えば約47万円の家賃が入ってくる計算になります。
ここで大事なのは、この数字には何も引かれていないという点です。ローンの返済も、管理費も、修繕費も、税金も、すべて「引く前」の数字がそのまま利回りとして表示されています。
不動産ポータルサイトや物件広告に載っている利回りは、ほぼすべてこの「表面利回り」です。しかも多くの場合、満室状態を前提とした計算になっています。つまり、表面利回りとは「売り手の都合で計算された上限値」にすぎません。
この事実をしっかり頭に入れたうえで、次の章から「実際に何が引かれていくのか」を順番に確認していきましょう。
8,000万円の地方一棟アパート、まず何が引かれるのか
年間家賃収入560万円から、実際に何がどれくらい引かれるのか。項目ごとに分解していきます。これを知ってから物件を見るのと、知らないで見るのでは、物件の見え方がまったく変わってきます。
①ローン返済(元利金返済)
不動産投資における最大の支出は、ローン返済です。8,000万円をフルローンで借り入れた場合、条件によって月々の返済額は大きく変わります。
たとえば金利2.0%・返済期間35年のフルローンであれば、月々の返済額は約26.5万円、年間では約318万円になります。家賃収入560万円に対して、この時点ですでに約57%がローン返済に消えていく計算です。
借入金利が上がるほど、また返済期間が短いほど、毎月の返済額は増加します。地方銀行や信用金庫では融資条件が都市部と異なるケースも多く、金利・期間の条件次第でキャッシュフローは数十万円単位で変わります。また自己資金をどれだけ入れるかによっても、ここの数字は大きく変動します。
②管理委託費
一棟アパートを所有しても、自分で入居者管理・賃貸管理をするのは現実的ではありません。管理会社への委託が一般的で、その費用は家賃収入の5〜10%程度が相場です。
560万円の5%で計算すると、年間約28万円。これは最低ラインの試算です。地方物件は都市部に比べて空室が出やすいため、入居者の確保力が高い管理会社を選ぶことが収益安定の命綱になります。管理会社の質を妥協してコストを削ると、空室が続いて損失が膨らむリスクがあります。
③修繕費・原状回復費
修繕費は「毎月均等にかかるコスト」ではなく、「出ていかない年もあるが、まとまって出る年もある」というのが実態です。入居者の退去時の原状回復費用、給湯器の交換、屋根防水の工事、外壁塗装など、1回で数十万〜数百万円の出費になることも珍しくありません。
一般的な目安として、修繕積立は家賃収入の10〜15%程度を毎年確保しておくことが推奨されます。560万円の10%であれば年間56万円。この積立を怠ると、大きな修繕が発生したタイミングで手元資金が底をついてしまいます。
④固定資産税・都市計画税
不動産を所有すると、毎年固定資産税と都市計画税がかかります。地方物件でも規模感によって年間20〜50万円程度になるケースが一般的です(所在地・評価額によって差があります)。
この税額は物件購入前に課税明細を取り寄せて確認することが可能です。「想定より高かった」とならないよう、必ず事前に確認する習慣をつけましょう。
⑤火災保険・地震保険
一棟アパートの場合、火災保険料は年間5〜15万円程度が目安です。地震保険は任意加入ですが、地方エリア・地盤の状況によっては加入を検討すべきケースもあります。保険料は築年数・構造・所在地によって変わるため、見積もりを取ったうえで計算に組み込む必要があります。
⑥所得税・住民税(会社員には特に重要)
不動産投資で得た収益は「不動産所得」として、給与所得と合算して課税されます。これを総合課税といいます。
たとえば年収600万円の会社員が年間100万円の不動産所得を得た場合、合計700万円に対して累進税率が適用されます。所得税の税率は課税所得に応じて5〜45%と幅があるため、給与が高い人ほど不動産収入への課税率も高くなる構造です(参考:国税庁「不動産所得の計算」)。
なお、青色申告特別控除(最大65万円)を活用することで課税所得を圧縮できるため、不動産投資を始める際は青色申告の届出を早めに検討することをおすすめします。
全部引いたら、実際いくら残るか【試算表】
ここまでの項目を整理して、実際に試算表にまとめてみます。あくまでシミュレーションであり、実際の数字は物件・借入条件によって変わりますが、「考え方の骨格」として参照してください。
| 項目 | 年間金額(概算) |
|---|---|
| 表面利回り7%の家賃収入(満室想定) | +560万円 |
| ローン返済(元利・金利2.0%・35年) | △318万円 |
| 管理委託費(家賃収入の5%) | △28万円 |
| 修繕積立(家賃収入の10%) | △56万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | △35万円 |
| 保険料(火災保険等) | △10万円 |
| 差引キャッシュフロー(税引前) | +113万円 |
| 所得税・住民税(目安) | △40〜60万円 |
| 税引後の実質手残り | 約50〜70万円/年 |
※上記はあくまでシミュレーションです。借入条件・管理費率・修繕発生額・税率などは物件・個人の状況によって大きく異なります。
8,000万円という大きな資産を動かして、税引後の手残りが年間50〜70万円。月換算で言えば約4〜6万円です。
この数字を見て「思っていたより少ない」と感じる人は多いはずです。でも、これが現実のキャッシュフローの目安です。表面利回り7%という数字が「上限値」であり、そこから各コストをひとつひとつ差し引いた先にある実態がこの金額です。
【筆者の経験】
私は福岡県内にある築7年の木造一棟アパートを、事業費総額約8,423万円(土地・建物本体7,950万円+諸経費約473万円)で購入しました。表面利回りは満室時7.02%、自己資金は諸経費分の約473万円のみでフルローンを組み、借入金利2.7%・返済期間33年の条件です。
家賃収入は満室時で年間558万円。ここから毎月のローン返済(年間364万2,186円)、賃貸管理料(家賃の5.5%、年間30万6,900円)、共用部分の電気・水道代(年間3万6,000円)、清掃料(年間10万5,600円)、インターネット利用料(年間13万2,000円)が引かれ、月間の手残りは11万3,110円でした。
ここにさらに固定資産税・都市計画税(年間37万6,800円)を差し引くと、年間の手残りキャッシュフローは98万514円。表面利回り7%という数字だけを見ていた頃の期待値からすると、実質の手残りは家賃収入の約17.6%まで圧縮される計算になります。
なお空室率は運用実績がまだないため反映しておらず、この数字は満室想定であることをお断りしておきます。
実質利回りはどう計算するか、本来の数字を出してみた
ここで「実質利回り」という概念を整理しておきましょう。計算式は次のとおりです。
実質利回り(%)=(年間家賃収入 − 諸経費)÷(物件価格 + 取得コスト)× 100
表面利回りとの違いは2点あります。①分子から諸経費を引く、②分母に取得コストを加算する、という点です。
取得コストとは、物件購入時にかかる仲介手数料・登記費用・不動産取得税・印紙税などの総称です。目安としては物件価格の7〜10%程度が一般的で、8,000万円の物件であれば取得コストだけで500〜800万円が別途かかります。
先ほどの試算表の数字を使って実質利回りを計算すると、次のようになります。
- 年間家賃収入:560万円
- 諸経費(管理費・修繕積立・固定資産税・保険料):約129万円
- (年間家賃収入 − 諸経費):約431万円
- 物件価格 + 取得コスト:約8,500〜8,800万円
- 実質利回り:約4.9〜5.1%
さらにローン返済を含めたキャッシュフローベースで見ると、実態的な利回りは3〜4%台に落ち着くことが多いです。「表面7% → 実質3〜4%台」というのが、地方一棟アパートの利回りの実態です。
この落差を知ったうえで物件を検討するのと、表面利回りの数字だけを見て「7%は高い、いい投資だ」と判断するのでは、判断の質がまったく違います。
投資実行前に直視したリスクと、それでも踏み切った理由
試算を重ねた結果、私はこれらのリスクをすべて把握したうえで、それでも投資を実行することを選びました。ただし、その判断に至るまでに正面から向き合った課題がいくつかあります。同様に検討している方のために、その考え方を整理しておきます。
まず、年間手残り50〜70万円という数字が「8,000万円という集中投資のリスクに見合うか」という問いです。分散投資が基本とされる資産形成の文脈で考えると、1つの物件に8,000万円超を投じることは、かなり集中したリスクテイクになります。
次に、空室が発生した場合の問題です。ローンの返済は空室でも止まりません。仮に家賃収入がゼロになっても、毎月のローン返済は続きます。満室想定のキャッシュフローが月4〜6万円しかないとすれば、1部屋でも空室が出た瞬間にキャッシュフローはマイナスに転落する可能性があります。
また、自己資金が薄い状態でフルローンに近い形で購入した場合、予期せぬ大規模修繕が発生したときの資金手当ても問題になります。「良い投資か悪い投資か」ではなく、「今の自分の資金力と属性に合う投資か」という視点が、不動産投資の入口では特に重要です。
サイドFIREや不動産収入で本業依存を下げたいという目標は理解できますが、その前提として資金力と信用力が整っているかどうかを確認する必要があります。→ FIREは無理でもサイドFIREなら可能?会社員の現実解
それでも地方不動産投資を検討してよいケースとは
地方不動産投資を否定したいわけではありません。条件が揃っているなら、有効な資産形成手段になりえます。以下のようなケースは、前向きに検討できる状況と言えます。
- 自己資金が2,000〜3,000万円以上あり、レバレッジを抑えられる場合:借入額が小さくなるほど、毎月のローン返済が減り、キャッシュフローの余裕が生まれます。
- 物件価格が低く(2,000〜3,000万円台)、空室リスクが限定的なエリア:投資規模を小さく抑えることで、リスクの絶対額を下げられます。
- 本業収入が高く、不動産損失との損益通算を狙える場合:高税率の会社員が減価償却を活用して節税効果を得るというストラテジーです。ただしこれは出口戦略も含めた総合判断が必要です。
- 管理会社・リフォーム業者との信頼関係が構築できている人:地方物件は特に、現地の業者ネットワークが収益の安定に直結します。
いずれにしても、「属性と資金力が整ってから参入する」という順序が大切です。NISAやiDeCoで金融資産を積み上げながら、信用力を高めていくプロセスを経てから不動産に参入するのが、会社員としての現実的なルートです。→ 資産配分の最適解とは?30〜40代会社員のポートフォリオ戦略
表面利回りだけで判断しないために、最低限確認すべき3つのこと
物件情報を見るとき、最低限この3点は必ず確認する習慣をつけてください。
①満室想定の罠を確認する
広告に掲載されている表面利回りは、ほぼ100%「満室前提」の計算です。しかし地方エリアでは、空室率が10〜20%以上になっているエリアも珍しくありません。
購入検討エリアの空室率は、総務省が実施する「住宅・土地統計調査」や、地方自治体が公表している統計データで確認できます。現地の賃貸ニーズを客観的なデータで把握したうえで、空室率を加味したシミュレーションを必ず行いましょう。
②土地値と建物割合を確認する
地方物件は都市部に比べて土地の価格が低いため、物件全体に占める建物割合が高くなりがちです。建物は時間とともに価値が下がっていきますから(減価償却)、土地値の低い物件は将来の売却時に値崩れしやすい構造になっていることがあります。
「今のキャッシュフローはプラスでも、10年後に売却しようとしたら大幅な値下がりがあった」というケースは少なくありません。買う前から出口を意識することが重要です。
③出口(売却)シナリオを先に考える
「10年後に誰がこの物件を買うか」を想像できない物件には慎重になるべきです。地方エリアで人口減少が続いているエリアの物件は、10年後の需要が今より低下している可能性が高いです。
月4〜5万円のキャッシュフローを10年間受け取っても、売却時に数百万円の損失が出れば、トータルで損をするシナリオになりかねません。入口の利回りだけでなく、出口を含めたトータルリターンで物件を評価する習慣が必要です。
「利回りがよさそう」という印象だけで判断してしまうのは、投資でよくある失敗パターンのひとつです。→ 投資で失敗する人の特徴5選|30代会社員が避けるべき行動
まとめ:表面利回り7%は入口の数字、手残りで判断せよ
- 表面利回り7%は「年間家賃収入 ÷ 物件価格」だけを計算した引き算前の上限値
- 8,000万円・表面利回り7%の物件から、ローン返済・管理費・修繕積立・税金などを引くと、税引後の年間手残りは約50〜70万円(月4〜6万円)が現実ライン
- 実質利回りは諸経費・取得コストを加味すると3〜4%台になることが多い
- キャッシュフローだけでなく、空室リスク・出口戦略・資金力を含めて総合判断することが不可欠
- 地方不動産投資は「条件が揃えば有効」だが、「属性と資金力が整ってから参入する」という順序が重要
数字を全部引き算してから判断する。この習慣が、資産形成で失敗しないための第一歩です。表面利回りという「入口の数字」に惑わされず、手残りキャッシュフローという「出口の数字」で物件を評価できるようになれば、不動産投資の判断精度は大きく変わります。
良い投資か悪い投資かという二項対立ではなく、「今の自分に合う投資か、数字がそれを支えているか」という問いを持ち続けることが、会社員が資産形成を続けるうえで一番大切なことだと思っています。
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